トランプの利下げ要求

マララゴからの信号

トランプのTruth Social投稿は単なる演説ではない。連邦準備制度理事会（FRB）のジェローム・パウエル議長に対し、金利を2〜3％引き下げるよう求めている。これは段階的な調整ではなく、構造的な再設計だ。保守経済学者や個人投資家からも支持が広がる一方、歴史的に見れば大統領がFRBに成功した例は稀だ。

インフレは死んでいない…ただ眠っている

トランプはインフレはないと言い張るが、実際には核心PCEは2.5％以上で推移。サービス部門のインフレも完全に落ち着いていない。

仮に彼の前提を受け入れても、金利ゼロで成長続行なら、2ポイント引き下げは理論的には可能だが、実際にはリスクが高い。

グローバル視点：なぜ欧州は切ったのか？

欧州では2023年以降10回もの金利引き下げが行われた。経済力不足ではなく、「高エネルギー価格後の財政持続可能性」を優先した結果だ。高齢化と生産性低下という構造的課題があるためだ。

米国とは異なる。労働市場は依然タイトでGDP成長率も約2％。急激な引き下げは過熱を招き、再び抑制したインフレを呼び起こす恐れがある。

800億ドルの年間節約額も理想論に過ぎず、全ての部門に完璧な伝達が起きるわけではない。

暗号資産市場と利下げ幻想

私はETHステーキング以前から金利感応性を分析してきた専門家として強調したい：政治家の利下げ発言が大きくなると短期的にビットコイン価格は上昇傾向にある（FOMOや投機的ポジションによる）。

例えば2023年第4四半期にはトランプの発言と同時にBTC価格が5,000ドル上昇したものの、その後整理局面へ。

繰り返すが、「また同じことが起きる」という保証はない。政治的な騒動によるマネー追いではなく、基本的な要因を見極めるべきだ。

パウエルは何をするべきか？

FRBは政治的圧力を受けやすいが、「独立性」こそ設計上の目的である。パウエル氏も早期引き下げによるインフレ再燃リスクを理解しているはずだ。

暗号資産投資家たちは『金利低下＝価格上昇』という単純な物語に惹かれるが、現実は複雑だ：

• 金利低下 → 資産価格一時上昇
• レバレッジ増加
• インフレ再燃なら「スタグフラーション・ライト」状態 → 株式・暗号資産とも悪化

真の脅威はトランプの叫びではない。それは「制度的独立性」を蝕む政治劇なのだ。